登山に興味がある人や、始めたばかりの人と話していると、かなりの確率でこんなやり取りになることがあります。
「低山に登って楽しかった! もう少し高い山にも行ってみたい」
じゃあ、この山はどう?
「えっ、○○mもあるの?! それは無理かも……」
いや、その標高を全部自分の足で登るわけじゃないよ。
この説明を、今まで何度したかわかりません。
私は登山を始めた頃、標高700m以上の場所に住んでいました。
生活している場所がすでにそれなりの標高だったので、「標高1000mの山=1000m登る」みたいな感覚はあまりありませんでした。
でも今は平野に住んでいます。
登山を始めたいという人と話していると、どうやら「山頂の標高」と「自分が実際に登る高さ」がごちゃ混ぜになっていることが意外と多いみたいです。
標高3000mだから、3000m登るわけではない
たとえば乗鞍岳。最高峰の剣ヶ峰は標高3026mあります。
「3000mの山」と聞くと、登山をしたことがない人にはものすごく大変そうに聞こえるかもしれません。
でもコースによっては、バスでかなり高いところまで上がることができます。
そこから山頂を目指すなら、自分の足で登る累計標高差は400mちょっと程度。
私が歩いたときも、ザレ場が歩きにくいとは思いましたが、「息が苦しい」 「足が上がらない」というような体力的なしんどさは、そこまで感じませんでした。
一方で、山頂の標高が低いからといって楽とは限りません。
最高地点392mでも、けっこうきつかった沼津アルプス
私がその代表だと思っているのが、沼津アルプス。一番高い山でも標高392m。
数字だけ見たら、「400mもないならお気軽なのでは?」と思いたくなります。
でも私が歩いたときは、アップダウンを何度も繰り返して、累計標高差は1000m以上になりました。しかも、けっこう急なところもあります。
私は完全に「低山だし」とお気軽な気持ちで行ったので、めちゃくちゃきつかったです。
標高3000mを超える乗鞍岳より、最高地点400mにも満たない沼津アルプスのほうが、体力的にはずっとしんどかったです。
この経験だけでも、山頂の標高だけでは、その山のきつさはわからないということがよくわかります。
体力的なきつさを見るなら、まず累計標高差
初心者に山をすすめるとき、私がまず見るのは山頂の標高ではなく、累計標高差です。
ざっくり言えば、そのコースで登る高さを全部足したもの。
スタート地点から山頂まで500m高くなるコースでも、途中で下ってまた登れば、実際に登る量は500mより多くなります。
アップダウンの多い縦走路では、この差がかなり大きい。
私自身の感覚では、累計標高差500m前後なら、お気軽登山。1000mを超えると、今日はしっかり歩くな、という感じです。
もちろん体力や登山経験によって感じ方は全然違うので、これはあくまで私の場合。
でも初心者に山をすすめるときには、かなり参考にしている数字です。
累計標高差だけでなく、距離と急登も見る
とはいえ、累計標高差だけ見ればいいわけでもありません。
私の場合は、累計標高差1000mに対して行程10kmくらいをひとつの感覚的な基準にしています。
同じ累計1000mでも、15kmかけて登るのと、かなり短い距離で一気に登るのではしんどさが違います。
距離のわりに標高差が大きければ、「これ、けっこう急なんじゃない?」と考えます。
実際、累計標高差がそれほど大きくなくても、急登が続けば普通にきつい。
だから初心者にすすめるときは、
- 累計標高差
- 距離
- 急登があるか
あたりをまず確認しています。
「標高○mの山」という情報だけでは、体力的な難易度はほとんどわかりません。
じゃあ山頂の標高は見なくていいのか
もちろん、そんなことはありません。標高が高い山には、標高が高いからこその注意点があります。
私がまず気にするのは気温と風。平地では暑くても、標高が上がれば気温は下がります。風が強ければ体感温度もさらに下がるので、服装は低山とは変わってきます。紫外線も気になる。
そして、高山病にも注意したいです。
私はこれまで高山病らしい症状が出たことはほとんどありませんが、一緒に行った人がロープウェイで一気に標高を上げたあと、頭痛を訴えたことがあります。
交通機関で簡単に高い場所まで行けるからといって、高所の影響までなくなるわけではありません。
つまり、体力的なきつさを見る数字としては山頂標高だけでは足りない。
でも、気温や風、高所の影響を考えるためには標高そのものも大事です。
初心者には「登れる山」より「楽しかったと思える山」をすすめたい
そして私が初心者に山をすすめるとき、実は難易度以外にもかなり気にしていることがあります。
それは天気。
できれば絶対に晴れた日に行ってほしい。私自身、できることなら天気のいい日にしか山へ行きたくありません。
同じ山でも、晴れて景色が見える日と、ガスで何も見えない日では楽しさが全然違います。
もちろん雨の日の森や苔が好きな人もいるし、登山の楽しみ方はいろいろあります。
でも登山を始めたばかりで、まだ何が楽しいのかもよくわからない人なら、「こんな景色が見えるんだ!」と思える日のほうが、次につながりやすいと思います。
そして、できれば下山後に温泉がある。おいしいものも食べられる。
私は山をすすめるとき、こんなことをセットで考えています。
せっかく登山に興味を持ってくれたなら、「登れた」で終わるより、「山、楽しかった!」と思って帰ってきてほしいなあ、と思います。
「高い山に行きたい」と思ったら、標高だけで諦めなくていい
低山に登って、「もっと高いところに行ってみたい」と思ったとき。
おすすめされた山が2000m、3000mあるからといって、数字だけ見て「そんなの無理!」と諦める必要はありません。
まず見てほしいのは、そのコースを歩いたときの累計標高差。そして距離や急登、登山道の状態。
逆に、「標高500mしかないから余裕」とも思わないほうがいいです。
低山でも、何度も登って下ってを繰り返せば普通にきつい。山頂が何mあるかと、自分が何m登るかは別の話。
これを知っているだけでも、選べる山は増えると思います。
最初は無理のないコースを選んで、できれば晴れの日に。
景色を見て、下山したら温泉に入って、おいしいものを食べる。まずはそれくらい。
「また山に行きたい」と思えたら、その登山は大成功だと思っています。
山選びのもう一つの要素、コースタイムについてはこちらにまとめています。


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